たなかこういちの開発ノート

システム開発に携わる筆者が、あれこれアウトプットするブログ

予測型のウォーターフォールに対して適応型のアジャイル

先日、DDD Allianceによる「DDD Alliance! 3週連続DDD 第1週」という勉強会が開催されました。私は参加しなかったのですが、参加者さまによるツイートを眺めていたら「予測型のウォーターフォール、適応型のアジャイル」という趣旨のツイートを目にしました…

「リアクティブ・バックエンドにはScala」、または、プログラミング言語はターゲットとする新プラットフォームの普及とともに普及するものだ、という話

2015年現在、関数型言語が勃興しつつあります。エンタープライズ分野で関数型言語が次世代のプログラミング言語マーケットの覇権を握ることとなるのだとしたら、いつどのように握るのか、それはどの関数型言語なのか、その動向が大いに気になるところです。 …

モデリングとドメインについて

モデルおよびモデリングとは? 「モデル」とは「対象を如何に認識しているかを形式的に描いたもの」と説明できるでしょう。このことを分解していきます。まず、「対象の認識の仕方についての方法論」があるでしょう。どうやって対象を観測するか、観測結果を…

「サブジェクト指向」について(私的実践DDD、その4)(2 of 2)

(※前回からの続きです。) サブジェクトにおいてリポジトリーと集約はいかなる構造を取るか? ここまでで次のような疑問を持たれた方もいらっしゃるでしょう。 『サブジェクトの捉え方は理解したとして、その場合集約やリポジトリーはどのように設計される…

「サブジェクト指向」について(私的実践DDD、その4)(1 of 2)

(※前回からの続きです。) 「サブジェクト指向」の考え方は、オブジェクト指向分析・設計における「関心の分離」に関わる一つの方策として古くから提唱されているものです。人によって多少ニュアンスに違いがありますが、私はおおよそ下記記事が説明すると…

「リアクティブなんとか」はエンタープライズに何をもたらすか?

そもそも「Reactive」とは何か? まずは参考資料をリストします。 InfoQより、「注目を集めるリアクティブプログラミング」: http://www.infoq.com/jp/news/2013/09/reactive-programming-emerging ※オーバービューとして マルレク、2013年1月21日、開催テ…

私的実践DDD、その3

(※前回からの続きです。) 「境界付けられたコンテキスト」は常に理想形を、「サブドメイン」はその時の現実を表す まず確認すると、「リポジトリー」や「集約」はシステムの設計・構築レベルの話でしたが、「境界付けられたコンテキスト」や「サブドメイン…

私的実践DDD、その2

(※前回からの続きです。) CQRSはモデリング上の本質的な課題への対応である CQRS(Command-Query Responsibility Segregation、コマンド・クエリ責務分離)の採用は、現代的なシステムではほぼ全て必然的にそこへ帰結すると考えた方がよいと思います。CQRS…

私的実践DDD、その1

ようやく「実践ドメイン駆動設計」を読み終わりました。 髙木正弘訳、ヴァーン・ヴァーノン著、「実践ドメイン駆動設計」 実際にありそうな開発プロジェクトのストーリーに沿うかたちで話が進められます。コードExampleが極めて具体的に示されて、どうすべき…

キャシュ層を挟む

以前の記事で、フロントエンド-バックエンドのI/Fをどうするか話しましたが、ここにRead Cache層を差し込んでみます。 キャッシュは、最近の大規模サービスではほぼ必須の技術要素といえます。実装としては、memcachedやRedisといったインメモリーKVSがよく…

要件から設計する行為を、「Object」、「Subject」、「Attribute」、「Projection」で説明してみる

(Domain's) Objectとは? 業務プロセスに対する要求・要件の分析観点で抽出される、業務上のひとつの“管理対象”を認識したものを「(Domain's) Object」と、ここでは称することとします。「業務上のひとつの“管理対象”」とは、、業務プロセス内にひとつの部分…

業務プロセス、業務ロジックの理解と、フロントエンド−バックエンド間I/Fの詳細

下記は一般的なn層アーキテクチャーの図です。各層をここでは「Presentation」、「Business Logic」、「Data Access」と表現しています。 ただしいくつか特徴があります。一点目は、参照系と更新系のBusiness Logicを分別して表現していること。二点目は、「…

エラーケースのパターン分類〔ライブラリ実装編〕

(※〔運用編〕からの続きです。) エラーについての一連の記事では「処理」として「業務ロジック」を想定して議論を進めていました。では、その業務ロジックの実行環境・実行基盤たるフレームワークを実装するときや、日付演算ユーティリティ、XMLプロセッサ…

アジャイルでスタートアップも、軌道に乗ったらUPへ移行すべきときが来る、というものかもしれない

前の記事でも書きましたが、この1年ほど、コンシューマー向けWebサービス立ち上げのタイミングで、スクラムを実施する現場に参画することができました。Unified Processベースで開発プロセスを思考していた私にとって、ホンモノのアジャイルの現場は、当初は…

"Issue #19 can't be closed" (Complete Ver.)

歌 アイルちゃん 初めはいつもと同じコメント いつものように少し意地悪、少し優しく だけどようやく気付いた、 この繰り返しを終わらせたいから わたしはアイを進める 想いは全てcommitしたわ テストコードも抜かりはないの お願い、Merge me with you! わ…

ウー太くんとアイルちゃんの対話

ウー太くんは、アイルちゃんに対して次のように問いかけます。 「スケジュールとリソースとスコープについての計画が無ければ一体どうやってプロジェクトをマネージメントすることができるというんだい?」 アイルちゃんはウー太くんに対して、次のように答…

アジャイルとウォーターフォールは文化や価値観のレベルで異なるという話

ここ1年ほど、コンシューマー向けのWebサービス開発のプロジェクトに参画できました。タイミングとしては、フロント側のミニマム版の先行リリースが済んだところから、バックオフィス側を含めた当初予定の機能一式が揃うまで(いわば「Ver.1.0」といったとこ…

扇風機「GreenFan」を生み出したバルミューダ社が、急成長に伴い“アジャイル”から“UP”に転換した話

5月の連休にはいくつか書籍を読みました。そのうちの一冊が次です。 守山久子著/日経デザイン編 、「バルミューダ 奇跡のデザイン経営 ゼロからブランドを築く8つの法則」 バルミューダ株式会社(http://www.balmuda.com/)は、社員数3名、売上4500万円の、…

Web企業とアジャイルの話

一年ほど前の2014年4月に、IPAより「IT人材白書2014」が発行されました。同白書概要版5ページ目をみると、ITに関わる企業群を下記3つに分類しています。 IT企業 ユーザー企業 Web企業 従前よりエンプラ分野に関わっている私からみて、この分類は新鮮に映り…

エラーケースのパターン分類〔運用編〕

(※〔実装編〕からの続きです。) 〔実装編〕にて示した、各Conditionと対応するログレベルの一覧を再掲します。 Condition 終了ケース ログレベル(Log4j) 対応 担当 GREEN 成功終了/肯定的正常終了 INFO − YELLOW 失敗終了/否定的正常終了〔機能要件〕 …

Graph DBでOLTPする方式とGraph DBベースの組織情報管理アプリについて

私は以前の記事で、「Graph DBでは、排他制御の設計が難しいのでOLTPに向かないのではないか?」という見解を書きました。 その後、Amazon Auroraの技術的基礎となっているLog-Structured Storageについて学んだり、その他"Append-Only"方式のDB製品があるこ…

"Append-Only"なRethinkDB、Datomic、CouchDB

以前の記事で、"CRUD is dead"というフレーズについてと、Amazon Aurora同様のLog-Structured Storageを基礎とした「RethinkDB」というDB製品がある(あった)という話を書きました。 その後さらに調べて次のことがわかりました。 ・ まず、"CRUD is dead"と…

Java Day Tokyo 2015に参加してきました

Java Day Tokyo 2015に参加してきました。今年はJava誕生20周年だそうです。下の写真は懇親会で登場したDuke's Birthday Cakeです。 私の職業人人生=業界歴も今年(2015年)で21年目、Javaとほぼ同期だったのです。最初のJavaの仕事は1999年に「Servletは使…

"CRUD is dead"(死んだのは"U"と"D")と「RethinkDB」、もしくはAuroraの周辺話し

ときどき参加させていただいている「Scala勉強会」にて、OE氏(@OE_uia)より、ScalaDays 2015 in San Franciscoのレポートがありました。いろいろ話はあったわけですが、その中でひとつ気になったフレーズがありました。それは、 "CRUD is dead" です。 調べ…

マルレク講義ノート:Amazon Auroraについて

2015年3月24日に開催されたマルレクの講義ノートです。マルレク開催概要と講演資料は下記にて。 マルレク 第六回「Amazonのクラウド・データベースAurora」 開催概要:http://kokucheese.com/s/event/index/271242/ 講演資料:https://drive.google.com/file…

CAP定理とBASEトランザクション(丸山先生の講義より)、そしてMicroservice、最後に「酸と塩基」

もはや3、4年前ですが丸山先生よりCAP定理やBASEトランザクションの講義をうかがう機会がありました。今回改めてまとめてみました。 <参考資料> 丸山不二夫、「Cloudの技術的特徴について」:http://qcontokyo.com/tokyo-2009/pdf/GeneralSession-Day2-Mar…

Graph DBの使い所

結局のところGraph DBはどういった場面によく適用できるのでしょうか?オブジェクト指向の言葉で、 RDBと対比しながら考察してみました。 * RDBの広域構造と局所構造は次のように理解できます。 広域構造の特徴 テーブルはクラスの存在を、テーブルに格納さ…

エラーケースのパターン分類〔実装編〕

(※〔概念編〕からの続きです。) 各Condition=終了ケースをどのよう実装できるか、具体的な(主にJavaによる)実装パターンをまとめました。 Condition 終了ケース Log4j Log Level Java例外 実装例 トランザクション HTTP Status Code (Web API) GREEN 成…

エラーケースのパターン分類〔概念編〕(3/3)

(※前回からの続きです。) ■ 「Condition」の定義 五つの終了ケース類型を改めて下にまとめます。それぞれにイメージカラーを付けています。(※さながらトリアージュの優先度分類風。)筆者はこのカラー表現を「Condition」と称することとしています。 Cond…

エラーケースのパターン分類〔概念編〕(2/3)

(※前回からの続きです。) ■ 「失敗終了」をさらに二つに分類する 「失敗終了」は、その要因に基づいてさらに下記の二つに分類します。 - 機能要件に係るもの - 非機能要件に係るもの 「失敗終了」は、処理呼び出し側が呼び出し時の“契約”を守らなかったこ…